文学の凝縮、アイドルの拡散

2019-04-24から1日間の記事一覧

86.笙野頼子『極楽』

ふとしたときに気づく程度の雨音が、部屋のなかに所在なさを充填していく。 氏が25歳で書いた、群像新人賞受賞のデビュー作。 独特の芸術形態を追及する画家というキャラクターはありふれているが、地獄絵の形象、外界の観察と創作姿勢、どろどろとした思索…

85.今村夏子『こちらあみ子』

太宰治賞を受賞した氏のデビュー作。 「怪物」的少女を主人公にすえた小説で、三人称ながらunreliable tellerの書き方がなされているが、描写材料のとりあわせにささやかな心地よさが通底している。主人公の心情変化の足踏みといびつさ、会話の不通の描き方…