文学の凝縮、アイドルの拡散

20.人はなぜ自己表現をしたがるのか

 と突然大仰に題してみたものの、こういうことに関連した哲学や心理学などの学問的素養があるわけでもないし、この場でがっつりまともな文章が書ける自信は全くない。

 寂しさを埋めるため、というナイーブな回答で一蹴するのはとりあえず控えておいて、まあ、たまにはこういうテーマでとりとめのない随筆文を書いてみようと思う。

 

 本当はこういう話題に対する自分なりの回答としては、まとまった文量の小説をこしらえるべきであって(この「べき」はもちろん私によって私に課せられた観念的な義務にすぎない)、不思議に湧いてくる深夜帯特有の気概に任せてブログの一記事という格好で書き殴るのは、私の思索が文章として立ち上がる際に、とりわけ文学的な意味合いにおいて、「出来損ない」になってしまうことをすでに決定づけてしまうのだけれど、とは言えちゃんとした形式で記述するにはそれなりの時間やら気力やら意志やらが必要なので、ひとまずこういった形で手軽に記してみようと思った次第である。

 こういった注釈を長々と垂れているといつまで経っても本題に入れないし、前準備をいろいろやっているうちに疲れ、思慮していたことが丸ごとどうでもよくなってしまう精神状態に陥ってしまうと元も子もないため、瑣末なことには気を配らず、なるべく大振りな筆運びで素早く書き終えて就寝してしまうのがよかろう。

 

 少し引いた視点から述べると、情報革命以前の人々の自己表現の手段とは、周囲の人物とコミュニケーションを取るか、日記等の文章をしたためるかの2つに大別できそうである。

 もちろん絵画や音楽や演劇のような芸術、あるいは専門的な生業などそういったことも自己表現につながるものであるが、ひとまずここで述べる自己表現は言語的伝達手段のことに限定していて、同時にそれはほとんど全ての人々が担い手側になることのできた自己表現手段のことである。

 そしてインターネットの発達により電子的に文章の読み書き・共有が可能になったことによって、掲示板とかブログとか呼ばれるものが人々のあらたな交流、発信の場として発達した。

 ブログは初めは、テレビなどのマスメディア同様、主に「有名人」によって運営される自己表現の手段であったが、次第に一般人まで敷居が下がり、それはアナログな既存の交友関係にとどまらず、顔も実名も知らない他者との匿名的な交流を容易にした。

 そして「文字を書いたり画像を載せたりして自己を発信する」ブログの機能がその簡略性と流動性を高めていった結果、Twitterのようなソーシャルネットワークが発展し、次第に人々は現実と切り離された「デジタル世界のアバターとしての自分」を所有するというよりも、現実空間と仮想空間の自己が(仮想空間の中に自己が複数存在することもしばしばある)別々に存在しながら不思議に融和して、全てを覆うようなぼんやりとした大きなイメージの自分が横たわっているという、奇妙な状態を経験する。

 

 とずいぶん適当に「自己表現史」を述べ立てようと試みたが、やはりこういう文章を書くのはよろしくない。

 なんか変に教科書臭く、説教臭く、胡散臭くなってしまった。

 自分で読み返してみてもなんだか気味が悪い。

 というわけで上記の文章はもうほとんど無価値だ。

 私が書きたかったことはそういうことではなくて、とか言いつつでは何が書きたかったのかと改めて考え直すと、すでに実体が雲のように消えているのであるが、というか初めから確固としたものなどなかったのだろうが、なんか無理やり1つ言葉にしようとすると、例えばそれは、人が自己表現の手段を使い分けるとき、それぞれで解消したい心のわだかまりのようなものの種類が違っていて、かつ「どういうわだかまりにどの手段をどういう具合で適応すればよいのか」について、人々は試行錯誤を繰り返している、ということである。

 人々、などと大きく括るのは傲岸不遜で、正確には「私」という主語にするべきかもしれないが、まあ多分みんなそうだろうという楽観的な考えがあって、しかしそうするとまた、いやだから「みんな」って誰やねんというさらなるツッコミが自分の内側に生じるのであるが、いやいや言葉の定義に無駄に神経質すぎるよもっと感覚的に軽やかに進めよ、いやいやいやそれは逃げだよ、とかわけのわからぬ反駁合戦が開始され、そんなことを全て書き尽くそうと頑張り始めるとまあそれはそれで面白いけれど、基本的に見苦しさが増長する一方なので打ちきろう。

 自己表現の手段の使い分けとは、私の場合は手軽な順に、普段の対人での会話(これは場合によっては非常に手重になることもある)、ツイッター、ブログ、小説くらいだろうか。

 

 恐ろしく唐突であるが、このあたりで本記事を終えようと思う。

 起承転結の杜撰な文章で脈絡がなく、かつ題名に対する回答も文章中に見当たらないのであるが、思ったよりこのお題で書くことが大変で、疲れてしまった。

 初めに「早く書き終えて就寝するのがよかろう」みたいなことを書いてしまい、なんとなく一回書いたことを消すのも嫌だから、この文言を守るには本記事を書き終えるまで眠ることができないのであるが、もう私は早く電気を消してカーテンの隙間を青白く縁取る採光を眺めながら目を瞑りたいので、強行的に終えてしまうことにする。

 そうするとこの記事はある種の敗北経験であるが、まあこんなこともあったということで書き残しておいて、それがいつかの勝利につながるであろう。

 勝利?何に?

 

 とにかく文學界新人賞で最終候補に残ればあらゆる全てが解決する、霧が晴れる、それ以外は全て無意味です、虚構です。

 おっと、こんな酔狂じみた落書きに走り始めたらいよいよだな。

 私はもう一刻も早く寝たほうがいい。

 

 じゃあさようなら、今日。

 

 

トンボ鉛筆 消しゴム MONO モノPE01 10個 JCA-061

トンボ鉛筆 消しゴム MONO モノPE01 10個 JCA-061