文学の凝縮、アイドルの拡散

52.傑作と呼ばれるにふさわしい〜ロマン・ポランスキー『戦場のピアニスト』

 

戦場のピアニスト [DVD]

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 2002年公開、フランス・ポーランド・イギリス・ドイツの合作映画です。

 実在したユダヤ人のピアニスト、シュピルマンの体験記をもとに作った作品みたいです。

 パルム・ドールを受賞しています。

 

 とにかく撮影にお金も人も時間もたくさんかかっていることが容易にうかがい知れる映画。

 風景描写、会話のリズム、静と動の緩急、表情の陰影、見所が多くストーリーもほころびがないし、端的に言えば傑作です。

 

 前半は家族と一緒にナチスの迫害から逃れるため隠れて生活してるんですが、途中でひとりになってしまい、後半はずーっとひとりでナチスから戦火の町を逃げ惑います。

 ずーっと、セリフもほとんどなくて、ナチスの弾圧からひたすら逃げてる。

 そしてやはり、主人公がナチスの軍人にピアノを弾かされる終盤のシーンは圧倒的でしたね。

 薄暗い部屋の中で主人公の指先がかすかに震え、鍵盤をはじき、しだいに表情が静かな熱を帯び始め、全身がしなやかに躍動する。

 大口の窓から斜めに差しこむ月明かりが椅子に腰掛けたドイツ人の毅然とした顔を照らし出す。

 ショパンのバラード1番でしたね。

 やっぱこの曲は最後の方でゴゴゴゴゴゴッと盛り上がるので、こういうシチュエーションに向いてますね、漫画ないしアニメないし映画『四月は君の嘘』でもラストの演奏はバラ1でしたし。

 

 ノンフィクション、というか実際に現実に起こったことの再現に近い世界を描く映像作品というのは、それ自体みようみてやろうという意気込みが湧いてきます。

 ナチスの迫害みたいな出来事が過去にあったかと思うと、21世紀の東京でフリーターになるくらい(春からの私)マジで一抹の不安にも及ばないような気がしてくる、そういう効用はわりと大事にしています。