文学の凝縮、アイドルの拡散

74.チェーホフ『三人姉妹』

 

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

 

友人に、

「君の彼女は小説の登場人物でいうと誰に似ているんだい」とたずねたところ、

「強いていえばチェホフの『三人姉妹』の三女のイリーナかな」と返答されたため、本作を拝読。

 

戯曲であるため、作品はほとんどセリフのみで構成されている。

 

私は戯曲という散文作品をちゃんと読むのがおそらく初めてで、この形式自体が新鮮。登場人物の数が多く、一読で話を追うのは困難。が、書かれているセリフそのものは(私の読書経験からすると)風変わりであり、興味深い。全体を通してあまり会話が噛み合っていないのもよい。

 

自由と束縛どっちつかずの場所で、ささいな苛立ち、繰り返される落胆、恋愛への没入、堂々と語られる哲学論、そういったいくつもの歯車がゆるく噛み合いながら、全体の機関がなんともいえず非効率に回転している。そういう印象。