文学の凝縮、アイドルの拡散

83.奥野紗世子『逃げ水は街の血潮』

ひさかたぶりの更新。

 

小説をかこうかこうと思いながら結局かくことはなく、飲み会やら出会い系やら引っ越しやらにたたみかけられながら、学生最後の一か月はすぎていった。むろん小説や映画にふれることもなかった。

 

そして、正真正銘のフリーターになった。 

文學界2019年5月号

文學界2019年5月号

 

今回の文學界新人賞受賞作の、2作のうちのひとつ。

 

地下アイドルを取り扱った初めての純文学といえるのではなかろうか。アイドルについては小生一家言あるため、その点において悔しさがつのる。

 

サブカルのワードがちりばめられ(わたしの知らない単語がいっぱいでてきた)、そして文章がはやい。文意はちぐはぐに接続され、詩的であると同時にその粗さが力強さにうまく転換されているのは、ワーディングと比喩のセンス。ただ終盤の展開は改善の余地があるのでは、と思った。

 そう考えていたらもうペッティング? 終わりそうだった、AV仕込みの手マンa.k.a.火起こしを受けていた。

「痛い? あんまり気持ちよくない?」

 ヤバい。反応を全然していなかった。

 カマすしかねえ! わたしは膣を締めた。「今日は中で出していい日」と囁いて脚を胴に絡ませていた。もういいや! 今日は工藤朝子の葬式です! ってノリだった。できちゃった婚、今はダブルハッピー婚っていうんだっけか。妊娠、それは素敵なアイデア!(文學界2019年5月号p19)