なんとなくブログのタイトルを変えた。以前のタイトルについてかねがね気持ち悪いと思っていたので。
伊藤比呂美は詩人だが、小説もいくつか書いていて、本作は芥川賞候補にもあがった。
まずもって、ああ、詩っぽい~、て感じがある。ろくに詩のことを知らないけど。筋につかみどころがなくて、気を張っていないと書かれている文章が頭を素通りしてしまう。「あたし」の一人称小説なのだが、地の文における転換が自在で、記述の矛先は頻繁に切り替わり、使用される日本語そのものへのメタ的な言及もたびたびある。軽量でびみょうにアンバランスな言葉のつらなり、雲みたいなイメージが始終たゆたっている。
エルニーニョが終わったそうですね。
誰に聞いたか忘れましたが、聞いたのはたしかです。
それで今度はラニーニャだそうですね。不思議な命名です。エルニーニョの女性形だということならわかります。
今年の冬は雨だらけでした。
豪雨と言っていいほどの雨がひんぱんに降りました。
屋根は雨もりがして、床は湿気で膨張して、家の前の道路は水があふれました。あたしたち、こっちに、傘なんて持って来ませんでした。向こうじゃ何本も何本も持っていたんですが。(冒頭)