文学の凝縮、アイドルの拡散

小説家志望東大卒フリーターの読書ブログ

おもに2018年6月以降によんだ小説の感想

94.金井美恵子『愛の生活』

 

愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫)

愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫)

 

金井美恵子が20歳のときに書いた処女作で、第3回太宰治賞の最終候補(1967)。

 

こういう作品にたいする向き合い方というのはむずかしい。最近よんだ伊藤比呂美ラニーニャ』もそうだが、物語の輪郭が薄く、ふうがわりな言葉の運び方、センテンスのつなぎ方によって、詩的空間をこねるような作品。もうすこし言及すれば、この二作の共通点として語彙の平易さと大胆な語尾の変化があげられる。やや乱暴に形容すると、37歳くらいの文化系主婦がアールグレイすすりながらよんでそうな小説。

 

もちろん筆力や構想のすごさは認めるいっぽう、個人的には読んでいて退屈さをおぼえることが少なくなかった。ただ、こういう清流の垂れ流しみたいな小説は、読み手のコンディションに依存する部分が大きいと思うので、いまの自分の気分に向いていなかっただけかもしれない。

 

あと、段落が変わるときに字下げしてたりしてなかったり、という謎の特徴がある。

 

 一日のはじまりがはじまる。

昨日がどこで終ったのか、わたしにははっきりとした記憶がすでにない。

機能がどんな日であったかを、正確に思い出すことがわたしには出来ない。枕元の時計を見ると十時だ。昨日の夕食に、わたしは何を食べたのだったろう?(冒頭)