文学の凝縮、アイドルの拡散

2019-01-01から1年間の記事一覧

71.寒川光太郎『密猟者』〜芥川賞史上もっとも激賞された小説のひとつ

1940年第10回芥川賞受賞作、寒川光太郎の『密猟者』。 まずもって、遠い場所で書かれた文章という印象が強烈であった。それは約80年の時代の隔たりや、北方の狩猟者という舞台設定に起因するのではなく、堅固でありながら奔放自在のレトリックをはらんだ特異…

70.『銃』中村文則〜さっぱりとした狂気、破綻した心情

一ヶ月ぶりの更新となりました。 じっさい修論に追われ、小説からも映画からもながらく距離をおいていました。 研究および学生生活のおわりを迎え、同時に空白の春が私を包みこみ、かかる立場におかれ無闇な追想にふけったりもしますが、ともあれ、前進しな…