文学の凝縮、アイドルの拡散

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

97.デヴィッド・フィンチャー『ファイト・クラブ』

1999年公開のアメリカ映画。平凡な社会生活への反発心から、主人公らは「ファイトクラブ」なる格闘クラブを立ち上げ、徐々に反社会的活動に手を染めていく話。 (文学的な描写としての)いいカットがところどころあった。が、後半のネタバレ以降は低調で、終…

96.円城塔『道化師の蝶』

円城塔はもともと大学の研究員で、『Self-Reference ENGINE』が小松左京賞最終候補となり、なんとこのとき伊藤計劃の『虐殺器官』も最終候補になっていて、結局受賞作は出なかったが、その後両作とも早川から出版された(小松左京賞自体は角川主催)。で、そ…

95.中村文則『土の中の子供』

中村文則が27か28歳くらいのときに書いた芥川賞受賞作。 冒頭からずっと読みやすい。それは、暴力や死がからんだ吸引力ある展開と、平易な語彙空間ながら処々に隠れたうまい表現がもたらしている。個人的には中村文則は、「大衆受けもする純文学」のひとつの…

94.金井美恵子『愛の生活』

金井美恵子が20歳のときに書いた処女作で、第3回太宰治賞の最終候補(1967)。 こういう作品にたいする向き合い方というのはむずかしい。最近よんだ伊藤比呂美『ラニーニャ』もそうだが、物語の輪郭が薄く、ふうがわりな言葉の運び方、センテンスのつなぎ方…

93.片渕須直『この世界の片隅に』

すこしまえにはやっていたやつ。もともと漫画、映画よりもっと不思議で怖い感じの。2016年に公開して、いまだ上映している場所があるらしい。 場面転換がハイスピード。戦争ものなのに心情描写がさらさらしていて、異常にねばりけがない。主人公が途中で右腕…

92.リュックベンソン『レオン』

1994年公開の映画。 おれも12歳の女の子からガチ告白されてえな、と思った。

91.大江健三郎『死者の奢り』

大江が22か23歳くらいで書いた70枚程度の小説。 本作『死者の奢り』と『他人の足』が当時の芥川賞候補、その次の回で『飼育』と『鳩』が芥川賞候補。で、『飼育』が受賞。 大江の作風であるが、「僕の体の深みに、統制できない、ぐいぐい頭を持ちあげてくる…

90.伊藤比呂美『ラニーニャ』

なんとなくブログのタイトルを変えた。以前のタイトルについてかねがね気持ち悪いと思っていたので。 伊藤比呂美は詩人だが、小説もいくつか書いていて、本作は芥川賞候補にもあがった。 まずもって、ああ、詩っぽい~、て感じがある。ろくに詩のことを知ら…

89.西加奈子『うつくしい人』

はじめてちゃんと西加奈子よんだ。 読みやすい。島のゴージャスなホテルに三十路女が一人旅してバーでふたりくらいの変な男と出会うという舞台設定がいい。エンタメっぽいというか定型っぽい書きつけも多いが、光る表現もところどころある。200ページもある…

88.ビートたけし『ホールド・ラップ(ラップ・アップ)』

たけしの小説はじめて読んだが、やっぱおもろい。逐一挿入されるリリックしかり、ギャグベースの文章だが、切実な感じが伝わる。 昼寝て、働く夜中のバイト! 寝ないで暴れた日米安保! みんな卒業、俺だけ迷子! ジャンジャン狂う生活テンポ! 四〇そこらで…

87.石倉真帆『そこどけあほが通るさかい』

最近は乱読乱筆、のつもりだができてたりできてなかったり、慢性的にお金がない、飲んでばかりいるので、女性とも、野郎とも、ひとりの夜は息が止まりそうになる、というのは乱暴すぎる表現、だが遠からず。 『そこどけあほが通るさかい』は今回の群像新人賞…