文学の凝縮、アイドルの拡散

2020-01-21から1日間の記事一覧

104.上田岳弘『太陽』

人、土地、時間がめまぐるしく入れ替わり立ち替わりしながら、時間・空間的に大きなスケールで描いています。 人物同士の巡り合わせや節々のナレーションなどの妙にわざとらしい感じも、結局取り合わせの喜劇的なスパイスや切実な抒情表現の下支えを受けて、…

103.長嶋有『サイドカーに犬』

吉村萬壱『クチュクチュバーン』と2001年文學界新人賞を同時受賞した作品ですが、こちらは対局的に、平凡な世界の日常的な風景が描かれます。 とはいえ何気ない描写のなかに、スプーンひとさじの旨味が詰まっていて、読み応えがあします。 冒頭引用したかっ…

102.吉村萬壱『クチュクチュバーン』

一カ所に留まっていても仕方がない、とは誰もが思い、人々は移動をやめなかった。混 乱は続いていたが、何が起こりつつあるのかまったく分からないという人間は少なくなっ てきていた。 それでもこんな質問をする子どもがいる。 「母ちゃん、怖くないか?」 …