文学の凝縮、アイドルの拡散

80.町屋良平『青が破れる』

 

青が破れる

青が破れる

 

文藝賞を受賞した、氏のデビュー作。

 

全体を通して通俗的な「甘酸っぱさ」を漂わせながらも、確かなる文学。しびれるフレーズが多くみられる。芥川賞受賞作『1R1分34秒』と比較して、持ち味であるテクストの自在な運動はそのコントロールがぞんざいだが、感情と情景の複合した流れの記述、コード的なものをたびたび踏み外す奔放さの源流がある。タイトルのつけかたは、『1R1分34秒』よりも好き。