先日発表された芥川賞受賞作。
わたしは現在町屋駅徒歩5分の場所でシェアハウスをしているが、どうやら町屋良平氏も近所に暮らしているみたい。
筆のにぎりが軽い。感情の噴出、文章の奔流がアクロバティックに展開されるが、バランス感覚が巧みにコントロールされていて、全体としてくどい印象はなくさらりとした後味がここちよい。モノローグ的な文章の集積の最下層からしぼりだされる言葉、長い潜水ののちの息継ぎにも似た情動の披瀝が、読者の胸の内に克明なフレーズとして残る。
ぼくは飽きもせずもう一度窓辺の彼女を抱いた。まだパンツだけの姿だったぼくに、ぼくのシャツを着た彼女。いいにおいがして、ぼくはもう、果てしがないよ。(文藝春秋2019年3月号 p444)