文学の凝縮、アイドルの拡散

82.デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』

 

パステルカラーのダイスを転がすみたいに、めまぐるしく色とりどりのカットが展開していく。ミュージカル映画というのは、ミュージカルの挿入の反復によってフィクションの構造性が柔和になる。物語の輪郭線がうすくなる。いやむしろ、力強い破壊によって形式そのものが変容する。本作の後半は、徐々に雲が立ち込めるような暗がりが伸び広がり、画面は静まり、肩こりのようないやな重たさをそのうちに収めている。ラストシーン、ありえたかもしれない平行世界の再現。連鎖する爆薬のように、いくつもの情動がはぜていく。甘やかな慕情も夢への憧憬も、イマジネーションの内側に閉じ込められる。それは生きるための原動力でもあり、生きた結果そのものでもある。イマジネーションの頼もしさと虚しさとが、ほほえみの上で静かに同居している。