文学の凝縮、アイドルの拡散

映画

82.デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』

パステルカラーのダイスを転がすみたいに、めまぐるしく色とりどりのカットが展開していく。ミュージカル映画というのは、ミュージカルの挿入の反復によってフィクションの構造性が柔和になる。物語の輪郭線がうすくなる。いやむしろ、力強い破壊によって形…

69.テリー・ジョージ『ホテル・ルワンダ』

2004年公開、南アフリカ制作の社会派映画。 Wikipediaをコピペすると、 「1994年、ルワンダで勃発したルワンダ虐殺によりフツ族過激派が同族の穏健派やツチ族を120万人以上虐殺するという状況の中、1200名以上の難民を自分が働いていたホテルに匿ったホテル…

68.行定勲『パレード』〜案外エンタメっぽくない

2010年公開、吉田修一原作の、シェアハウスしている若者たちの近いようでいて少し距離のある、なんとなく不気味な人間関係を描いた作品です。 吉田修一原作とだけあって、流行りの役者勢揃いという感じのキャストでありながら、ポップさをまといつつもじっと…

67.堤幸彦『天空の蜂』

東野圭吾原作の、原発の上に巨大ヘリを墜落させるぞというテロのサスペンス映画です。 父親に異常に勧められたから見ましたが、まあ、、、という感じでした。 映像はきれいでした。 東野圭吾原作の映像作品だったら他のやつの方がいいと思います。 純文学を…

66.フェデリコ・フェリーニ『道』〜午後の日差しの寂しさ

1954年公開のイタリア映画です。 特に何の取り柄もない女性が、むきむきで粗暴な性格の、胸に巻いた鎖を肺を膨らませて引きちぎる芸一本勝負の大道芸人の付き人になって旅をするという白黒映画です。 前に視聴したルーマニア映画もそうですが、こういうのは…

65.クリスティアン・ムンジウ『4ヶ月、3週と2日』〜パルム・ドールを受賞したルーマニア映画

映画はずっと駅前のTSUTAYAで旧作200円を借りていたのですが、近くのGEOでは旧作100円ということで、最近はもっぱらGEOを利用するようになりました。 2007年公開のルーマニア映画で、パルム・ドールを獲っているようです。 独裁政権下のルーマニアを舞台に、…

64.トーマス・ヤーン『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』〜死ななきゃ何やってもええやん

1997年公開のドイツ映画です。 余命の短いふたりが病院を脱走して好き勝手やりたい放題します。 基本的にコメディタッチですが、ふたりに死が迫っているという設定が、話に立体感を与えているように思います。 全編を通して、人間死ななきゃ何やってもいいよ…

62.北野武『アキレスと亀』〜芸術を追うこと

修士論文の提出期限まで約1か月となりました。 最近は4、5時間くらい研究室にいて、帰宅してから映画をみたり本を読んだりという生活をおくっています。 あと、ひとつきほど前から、3日に1回くらいのペースで7kmくらい荒川沿いのコースをランニングしてい…

61.北野武「菊次郎の夏」〜傍若無人な男の描像

約3週間ぶりの投稿となりました。 3週間前に帰京してから、太宰治賞にむけて原則読書と映画鑑賞を断った生活を送り、いくつか構想を考えたりはしたのですが、結局小説を書くことができずに終わってしまいました。 やると決めたことを断念する運びとなった…

59.全く無駄のない〜山田洋次『幸福の黄色いハンカチ』

1977年公開、われわれの親世代はみんな観てる映画みたいですね。 非常によくできた、絶妙なバランス感覚のエンタメ作品だと思いました。 テンポがよく、3人の登場人物のそれぞれがキャラ立ちしていて、高倉健演じる元囚人の過去が小出しにされていく速度もほ…

58.上質白黒コメディ〜ハワード・ホークス『赤ちゃん教育』

1938年公開、アメリカのコメディ映画。 映画好きの友人から、界隈では有名(?)だと勧められて観ました。 動物学者の主人公が、自由奔放な娘によって豹探しなどのいざこざに巻き込まれていく話です。 この女性の、主人公にたいする無駄がらみの感じや、内容…

57.あいまいさの使い方〜是枝裕和『万引き家族』

まだぎりぎり上映中の映画。 車で1時間半かけて両親と映画館にいきました。 この前カンヌのパルム・ドールを受賞した作品です。 エンタメとしては相当完成度の高い作品だと思いました。 言葉や表情のかけあいがいい、ユーモラスで心地よい。 気になった点を…

56.拳銃なしでも真骨頂が味わえる〜北野武『あの夏、いちばん静かな海』

1991年公開、聾者がサーフィンを始める話です。 北野武作品にはめずらしく拳銃が登場しませんが、真骨頂はいくつも発揮されています。 まず、表情ですね。 本作は主人公とその彼女(?)が聾者で、そして彼らは通常の聾者以上に「無口」なため全体としてかな…

53.荒い、とても〜園子温『冷たい熱帯魚』

帰省して実家にいる最中は、死が迫ってくるような不思議な感覚をふと覚えます。 さて、2010年公開の、いわゆるエログロって言われるタイプのやつです。 女性の濡れ場がエロいです。 神楽坂恵、黒沢あすか両氏のなんとも言えないエロ人妻っぽい顔つき、そして…

52.傑作と呼ばれるにふさわしい〜ロマン・ポランスキー『戦場のピアニスト』

2002年公開、フランス・ポーランド・イギリス・ドイツの合作映画です。 実在したユダヤ人のピアニスト、シュピルマンの体験記をもとに作った作品みたいです。 パルム・ドールを受賞しています。 とにかく撮影にお金も人も時間もたくさんかかっていることが容…

51.最後の一言が〜ジョエル・コーエン『ファーゴ』

1996年公開のアメリカ映画。 有名作ということで観てみました。 TSUTAYAだとミステリーコーナーに分類されていましたが、殺人事件が起こるとはいえミステリーという感じではないです。 誘拐事件を偽装してお金を得ようとしたら、微妙な歯車のズレが重なりあ…

50.トイレが汚い〜ダニー・ボイル『トレインスポッティング』

変な時期に帰省中です。 実家が床屋で、さっき髪をきりました。 東京を発つ直前に観た映画です。 スコットランドの、薬中の若者たちの危なっかしい日々を描いた映画です。 毎度のことですが、こういう映画に対すると馴染みのない世界を観られるということ自…

49.やんちゃな少年たちの心地よい会話〜北野武『キッズ・リターン』

1996年公開、バイク事故から復帰後の北野武の初監督作品です。 当時多くの報道陣が、事故を経験した影響で従来の北野映画とは異なる優しい映画を撮った、と評したみたいで、それに対し北野武が何かの対談で「それは間違いで、事故の前でも撮れた、自分の中に…

48.雪景色がきれい〜岩井俊二『Love Letter』

1995年公開の映画で、岩井俊二氏の初長編映画監督作品、らしいです。 いろいろ賞とってるみたいですね。 とにかく風景が、雪景色がきれいです。 まず冒頭のシーンがよいですね。 雪山に中山美穂演じる主人公が倒れこみ、起き上がって、ゆっくりふもとに下っ…

46.復讐の終わらせ方〜クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』

2008年公開のアメリカ映画、主演のイーストウッドが監督も担ってるみたいですね。 元軍人の頑固ジジイが隣家に暮らす隠キャのアジア人青年を教育していくという物語です。 一言で言えば、完成度の高いエンタメ作品、という感想を抱きました。 不良グループか…

45.ANIKIと呼ぶ黒人の面白さ〜北野武『BROTHER』

また北野映画を借りちまいました。 2001年公開の日英合作映画です。 なんかTSUTAYAにDVDレンタルに行くと、一作は北野武の映画を入れたくなっちゃうんですよね。。。

44.親子の会話〜ヴィム・ヴェンダース『パリ、テキサス』

1984年公開、西ドイツとフランスの合作映画です。 初めの方のずーっと風景を流しているシーンが、まず印象的でした。 針金のような細った短い草がまばらに散っているだけの砂地は見渡す限り荒涼としていて、みすぼらしい身なりの男が一人歩いている。

42.絵画的映像作品の極致〜アンドレイ・タルコフスキー『ノスタルジア』

1983年タルコフスキーがイタリアで撮った映画です。 以前同監督作の『鏡』を観たのですが、『鏡』よりは筋がわかりやすかったです。 といっても一般の映画と比べるとだいぶ筋が謎です。

41.暴力の呼吸〜北野武『その男、凶暴につき』

1989年公開の北野武初監督作品です。 もともと監督をやる予定だった深作欣二が降板し、主演の北野武が監督もやることになった、といういきさつがあるらしいですね。 公開前は映画業界の人たちも、よくいる有名人の新人監督のひとりくらいに思っていたようで…

40.上野オークラ劇場(ピンク映画館)に行ってきました

タイトルの通り、数日前に上野オークラ劇場というよく知られたピンク映画館に行ってきました。 ピンク映画館に入ること自体初めてで、いろいろ予想外に新鮮な体験をすることができました(後述します)。 一般は1600円、学生は1300円払えば一日中見放題とい…

38.日本統治下の朝鮮の名士の家に住み込む女中〜パク・チャヌク『お嬢さん』

TSUTAYAにおけるエロティックのジャンルの映画です。 タイトル通りですが、日本統治下の朝鮮の名士の家に住み込む女中が主人公の話です。 2016年公開の映画。 韓国併合下と言っても戦争を感じさせる風景はほとんどなくて、その豪奢な家の中に物語の軸が据え…

37.ロサンゼルスの不良たちの話〜『アン・ハサウェイ 裸の天使』

アン・ハサウェイ/裸の天使 [DVD] 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル 発売日: 2012/05/09 メディア: DVD クリック: 19回 この商品を含むブログ (2件) を見る 近所のTSUTAYAでエロティックというジャンルからいくつか借りました。 そのうちのひとつ…

36.なんか普通によかった〜今村昌平『うなぎ』

うなぎ 完全版 [DVD] 出版社/メーカー: ケイエスエス 発売日: 2004/01/23 メディア: DVD 購入: 1人 クリック: 27回 この商品を含むブログ (14件) を見る 1997年公開の今村昌平監督作品で、パルム・ドール賞を受賞した作品です。 ちなみにパルム・ドール…

35.自己暗示から解放された実存主義の提示〜乃木坂46『帰り道は遠回りしたくなる』

さきほど乃木坂46の新曲MVが公開されました。 西野七瀬のラストシングルということもあって、グループの表題曲とは思えないほど西野七瀬しか映っていません。笑 では映画的なノリでMVを鑑賞してみましょう。

34.詩的断片の重なり〜アンドレイ・タルコフスキー『鏡』

ロシアの映画監督で最も著名とされているタルコフスキーの映画を観ました。 1975年公開の本作は、彼の自伝的作品らしく、彼の撮った映画の中でも特に難解な作品と評されているみたいですね。 鏡【デジタル完全復元版】 [DVD] 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・…