文学の凝縮、アイドルの拡散

89.西加奈子『うつくしい人』

 

うつくしい人 (幻冬舎文庫)

うつくしい人 (幻冬舎文庫)

 

はじめてちゃんと西加奈子よんだ。

 

読みやすい。島のゴージャスなホテルに三十路女が一人旅してバーでふたりくらいの変な男と出会うという舞台設定がいい。エンタメっぽいというか定型っぽい書きつけも多いが、光る表現もところどころある。200ページもある小説よんだのひさしぶりで、やっぱ長い小説の読後感っていいなと思った。

 空を見上げると、満月まであと少し、というところの月が浮かんでいる。その光の加減が、色みが、ここから見えるバーにそっくりで、私は目を瞑った。(p85)