文学の凝縮、アイドルの拡散

44.親子の会話〜ヴィム・ヴェンダース『パリ、テキサス』

 

パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]

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 1984年公開、西ドイツとフランスの合作映画です。

 

 初めの方のずーっと風景を流しているシーンが、まず印象的でした。

 針金のような細った短い草がまばらに散っているだけの砂地は見渡す限り荒涼としていて、みすぼらしい身なりの男が一人歩いている。

 

 物語上で重要な舞台となっているのが、マジックミラー越しに女と会話する形式の風俗なのも、いい発想だと思いました。

 それまでの世界観との落差が心地よかったというか。

 

 クライマックスで主人公が元妻に滔々と胸の内を明かしていくのは、なんかしゃべっている内容といい臭いというか、強いエンタメっぽさを感じ個人的な好みではありませんでしたが、とはいっても総合的には非常によい映画だと思いました。

 

 特によいと思ったのは親子の会話ですね。

 主人公は久しぶりに再会した息子と一緒に妻を探す旅(というよりも冒険?)に出るわけですが、心理距離の縮んでいく様子が、気の利いた8才児のユーモアも交えながら、二人の小気味良い会話を通して描かれています。

 歩道を歩く主人公の動きや仕草を、反対側の歩道を歩いている息子が物真似している下校シーンも印象に残っています。

 

 短いですが以上。