文学の凝縮、アイドルの拡散

23.銃と遊戯の融和ー北野武『ソナチネ』

 

ソナチネ [DVD]

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 最後の更新から半月以上空いてしまった。

 このブログの更新が滞るということは、その期間私が本を読んでいなかった、加えて映画を観ていなかったということを意味する。(以前たまたまの機会で『HANA-BI』を鑑賞してから、小説を読むのと同じ理由によって映画も観ることにしようと決めたのであった。)

 最後の更新以降何をしていたかというと、まず『グレート・ギャツビー』を読み始めた。

 当初の予定では、これを早く読み終えてもう二冊ほど読んでから文學界新人賞に応募する小説を書き始めるつもりだったのだが、結局『グレート・ギャツビー』すら読みおおせぬまま、文學界の小説を書き始めることになってしまった。(その小説を書いていて思ったいくつかのことも、近いうちに文字に起こしたいと考えている。)

 あとは通常の大学の研究や、アイドルさんのライブに通っていたことによって、9月の下旬は自分にしては案外に取り込んだ毎日だった。

 それで9月末日に小説を書き終え提出し、日の差すような開放感に包まれたのであるが、それも束の間10月2日から、すなわち今日的な昨日から、現在就活をしている某IT企業の一週間に渡るリモートインターンが始まったことによって、実際にはほとんど開放感を味わうことができなかった。

 ふざけた話である。

 

 さて本題に入ると、そのほとんど虚構に近かった一時の高揚感の中にいたとき、近くのTSUTAYAで邦画の有名な作品を手当たり次第借りた。

 そして1作目として今しがた、北野武監督作品の『ソナチネ』を観た。

 ソナチネ、はイタリア語で小さなソナタピアノ曲)の意味らしい。

 『HANA-BI』よりも前に撮られた映画である。

 連続して北野映画を観たわけであるが、この映画もやはり、よかった。

 単純にいい風景が多くて、純文学において何気なくも心惹かれる描写を読むときに似た快感を抱くことが多々あった。

 全体を通して描かれている世界観も魅力がある。

 暴力が生活の中にごく自然に溶けていて、不意に画面に緊張が走ったかと思うとたちまち銃の撃ち合いが勃発するし、そうでなくても仲間内での遊戯の中にすら拳銃が頻繁に登場する。

 印象的だったシーンは例えば、北野武演じるヤクザの主人公が、砂浜で突然子分らとロシアンルーレットを始め(実は弾が入っていなかったのであるが)、子分らが乾いた笑い声をあげながら、表情や発声に脈打つような震えが混じっている場面。

 他には例えば、夜の砂浜で(舞台が沖縄であり本映画には頻繁に砂浜のシーンが登場する)主人公が仲間らと2チームに別れてロケット花火の撃ち合いを始め、途中から主人公が笑いながら拳銃を撃ち始め、子分らも特段恐れる様子なく「ちょっとやめてくださいよ〜」と声を上げて朗らかな対応を見せている場面。

 暴力の通底した、乾いていてユーモラスな世界観が一貫して描かれていて、本作で世界的に北野映画のファンが増えたという事実は、まあ確かに想像に難くない。

 

 短いが、だいたいそういう感じで『ソナチネ』の感想を終える。