文学の凝縮、アイドルの拡散

87.石倉真帆『そこどけあほが通るさかい』

最近は乱読乱筆、のつもりだができてたりできてなかったり、慢性的にお金がない、飲んでばかりいるので、女性とも、野郎とも、ひとりの夜は息が止まりそうになる、というのは乱暴すぎる表現、だが遠からず。

 

 

群像 2019年 06 月号 [雑誌]

群像 2019年 06 月号 [雑誌]

 

『そこどけあほが通るさかい』は今回の群像新人賞受賞作。

 

少女の回顧と独白をつらねた文章の全体は、平易だが圧迫感がある。『ジニのパズル』に近い印象。てかふつうに面白い。この手の作品は、読みやすいし次の展開が気になるので、短い体感時間で読めてしまう。

 

平易な語彙によるモノローグの文章は、本小説のように主人公を未熟者に設定する必要があることを再確認した。「大人」が主人公では許容されない。そして肉薄に伴うちょっとした文体のゆらぎが、うまい具合に味付けになる。

 

「だから木田はあかんねや。嫁もあかんねや」

 とお経か呪文か知らんけど唱え始めた。怒鳴り損ねて婆を見つめてるおっさん。母ちゃん落ち着きいなと婆のもとに来て背中をたたいてる伯母。どないしたらええねんこの状況。はよ屁ェこいてえな。出えへんのやったらうちが気張ってみよか。(群像6月号p42)