文学の凝縮、アイドルの拡散

31.風景風景また風景ー是枝裕和『幻の光』

 

幻の光 [DVD]

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 是枝監督のデビュー作です。

 是枝監督と言えば『そして父になる』が超絶有名ですが、最近『万引き家族』がカンヌのパルム・ドールというかなりすごい賞を受賞したらしいですね。

 

 本作は宮本輝の同名の小説を映画化したものです。

 感想としてはとりあえず、ひたすら風景のカットが詰め込まれている......。

 とりわけ、近景が暗く閉じて遠景が明るく広がっているという、トンネルの中から外をのぞいているみたいなカットが多かった気がします。

 

 風景が淡々と切り替わり登場人物たちも多くを語らないので、確かにいわゆる文学的な雰囲気(いわゆる文学的な雰囲気とは?)が立ち上がっている気はするのですが、私には作品のよしあしが正直よくわかりませんでした。

 悪くないということだけはわかるのですが。

 まああんまり映画というものを観たことがないっていうのと、それ以上に自分の手で映画を撮ったことがないっていうのが、私の映画を見る目を乏しくしている理由だとは思うのですが......。

 小説であれば、ひとつひとつの文章やそれらの連なりが自然かとか巧いかとか、自分にこんな文章がかけるかみたいな観点からある程度は評価したり感心したりできるのですが、残念ながら映画に対してはあんまりそういう評価の手法や素養を持ち合わせていません。

 映画に関係ありそうな、「写真」という対象の批評についても、ほとんど見識がないです。

 聞いたところによると、最低限バルトの『明るい部屋』を読まないといけないみたいですね、写真を論じるには(適当)。

 一応趣味で水彩画を描くことがあるので、絵画であれば多少常人よりも見る目が養われているとは思うのですが......。

 

 うーん、芸術は何にしても自分で作り手側を経験してみないと鑑賞の目が決定的に欠乏したままであるというのが私の持論なので、さしあたり早急に自分で映画を撮ってみるのがよいのだろうなと思います。

 シェアハウスで1年以上に渡って撮影してきた写真素材がたくさんあるので、それらを適当に並べて、BGMつけて、ときどきセリフの文章を挿入するみたいなサイレントのショートムービーを作れたらいいかな。

 けどそろそろ群像に出す用の小説を書き始めなければいけない時期なので、それに取り掛かるのはしばらく後になりそうです。