文学の凝縮、アイドルの拡散

48.雪景色がきれい〜岩井俊二『Love Letter』

1995年公開の映画で、岩井俊二氏の初長編映画監督作品、らしいです。 いろいろ賞とってるみたいですね。 とにかく風景が、雪景色がきれいです。 まず冒頭のシーンがよいですね。 雪山に中山美穂演じる主人公が倒れこみ、起き上がって、ゆっくりふもとに下っ…

47.めっちゃ平易に短歌を説明した良書〜穂村弘『はじめての短歌』

タイトルのまんまですが、めっちゃ平易に「短歌」を説明してくれる良書です。 短歌とは何か、短歌はどう読む(詠むの方ではなく読解するの方)のか、など。 本書ではよい短歌とその「改悪例」を示して、もとの短歌のどの部分がうまいのかということについて…

46.復讐の終わらせ方〜クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』

2008年公開のアメリカ映画、主演のイーストウッドが監督も担ってるみたいですね。 元軍人の頑固ジジイが隣家に暮らす隠キャのアジア人青年を教育していくという物語です。 一言で言えば、完成度の高いエンタメ作品、という感想を抱きました。 不良グループか…

45.ANIKIと呼ぶ黒人の面白さ〜北野武『BROTHER』

また北野映画を借りちまいました。 2001年公開の日英合作映画です。 なんかTSUTAYAにDVDレンタルに行くと、一作は北野武の映画を入れたくなっちゃうんですよね。。。

44.親子の会話〜ヴィム・ヴェンダース『パリ、テキサス』

1984年公開、西ドイツとフランスの合作映画です。 初めの方のずーっと風景を流しているシーンが、まず印象的でした。 針金のような細った短い草がまばらに散っているだけの砂地は見渡す限り荒涼としていて、みすぼらしい身なりの男が一人歩いている。

43.文体の抜群のユニークネス〜若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』

読み始めてすぐ、これは相当な傑作だ。 ここ最近読んだ小説の中で一番おおと唸らされた気がします。 とにかく文体のユニークネスという点において、他のあらゆる小説から抜きん出ている作品です。

42.絵画的映像作品の極致〜アンドレイ・タルコフスキー『ノスタルジア』

1983年タルコフスキーがイタリアで撮った映画です。 以前同監督作の『鏡』を観たのですが、『鏡』よりは筋がわかりやすかったです。 といっても一般の映画と比べるとだいぶ筋が謎です。

41.暴力の呼吸〜北野武『その男、凶暴につき』

1989年公開の北野武初監督作品です。 もともと監督をやる予定だった深作欣二が降板し、主演の北野武が監督もやることになった、といういきさつがあるらしいですね。 公開前は映画業界の人たちも、よくいる有名人の新人監督のひとりくらいに思っていたようで…

40.上野オークラ劇場(ピンク映画館)に行ってきました

タイトルの通り、数日前に上野オークラ劇場というよく知られたピンク映画館に行ってきました。 ピンク映画館に入ること自体初めてで、いろいろ予想外に新鮮な体験をすることができました(後述します)。 一般は1600円、学生は1300円払えば一日中見放題とい…

39.エスプリ的な文章〜堀江敏幸『熊の敷石』

本作は堀江敏幸の2000年下半期芥川賞受賞作品です。フランスで生活する日本人の話で、本人もフランス文学者、わりと私小説的な作品らしいです。筆致は軽やか、突然時間軸を遡ったり、場面が切り替わったり、内省的な文章と風景描写が混じっている感じもあっ…

38.日本統治下の朝鮮の名士の家に住み込む女中〜パク・チャヌク『お嬢さん』

TSUTAYAにおけるエロティックのジャンルの映画です。 タイトル通りですが、日本統治下の朝鮮の名士の家に住み込む女中が主人公の話です。 2016年公開の映画。 韓国併合下と言っても戦争を感じさせる風景はほとんどなくて、その豪奢な家の中に物語の軸が据え…

37.ロサンゼルスの不良たちの話〜『アン・ハサウェイ 裸の天使』

アン・ハサウェイ/裸の天使 [DVD] 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル 発売日: 2012/05/09 メディア: DVD クリック: 19回 この商品を含むブログ (2件) を見る 近所のTSUTAYAでエロティックというジャンルからいくつか借りました。 そのうちのひとつ…

36.なんか普通によかった〜今村昌平『うなぎ』

うなぎ 完全版 [DVD] 出版社/メーカー: ケイエスエス 発売日: 2004/01/23 メディア: DVD 購入: 1人 クリック: 27回 この商品を含むブログ (14件) を見る 1997年公開の今村昌平監督作品で、パルム・ドール賞を受賞した作品です。 ちなみにパルム・ドール…

35.自己暗示から解放された実存主義の提示〜乃木坂46『帰り道は遠回りしたくなる』

さきほど乃木坂46の新曲MVが公開されました。 西野七瀬のラストシングルということもあって、グループの表題曲とは思えないほど西野七瀬しか映っていません。笑 では映画的なノリでMVを鑑賞してみましょう。

34.詩的断片の重なり〜アンドレイ・タルコフスキー『鏡』

ロシアの映画監督で最も著名とされているタルコフスキーの映画を観ました。 1975年公開の本作は、彼の自伝的作品らしく、彼の撮った映画の中でも特に難解な作品と評されているみたいですね。 鏡【デジタル完全復元版】 [DVD] 出版社/メーカー: アイ・ヴィ・…

33.永沢さんにはなりたくない

世間では、村上春樹の小説はネタ扱いされたり、おしゃれを気取っていてつまらないとか批判されることが多々ありますが、多少なりとも文学をかじっている人たちの間で、村上春樹のことを非難する人はひとりたりとも見たことがありません。 毎年ノーベル文学賞…

32.鉄パイプとおっぱい〜スタンリー・キューブリック『時計じかけのオレンジ』

時計じかけのオレンジ [DVD] 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ 発売日: 2010/04/21 メディア: DVD 購入: 9人 クリック: 51回 この商品を含むブログ (71件) を見る 小説ではなく映画の方です。 公開当時は自殺だか暴力事件だか、いろいろ社会への「…

31.風景風景また風景ー是枝裕和『幻の光』

幻の光 [DVD] 出版社/メーカー: バンダイビジュアル 発売日: 2003/04/25 メディア: DVD クリック: 39回 この商品を含むブログ (57件) を見る 是枝監督のデビュー作です。 是枝監督と言えば『そして父になる』が超絶有名ですが、最近『万引き家族』がカンヌの…

30.ファンタジーの描写方法〜安部公房『壁』

ブログを始めて約4ヶ月がたち、これでちょうど30本目の記事となりました。 最近は映画の感想が続いていましたが、今回は原点回帰(?)して小説の感想を書きます。 壁 (新潮文庫) 作者: 安部公房 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1969/05/20 メディア: …

29.純文からエンタメへの架橋ー北野武『アウトレイジ』

夜の12時前から同居人らと居間でトランプギャンブルを始めると、途中やよい軒に行った以外はほとんど休みなく、翌日の昼の3時ごろまで続きました。 私は1万4千円ほど勝ちました。 そうして各々の部屋に戻って、窓の外の仄明るい光の差し込む部屋で、ひ…

28.演技と文体ー小津安二郎『東京物語』

東京物語 [DVD] 出版社/メーカー: コスモコンテンツ 発売日: 2011/02/26 メディア: DVD 購入: 3人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (6件) を見る 『浮雲』を観たあと、TSUTAYAの返却期限(返却予定日の翌日の正午)が迫っていたため3時間だけ寝て、本…

27.大仰な演技ー成瀬巳喜男『浮雲』

浮雲 [DVD] 出版社/メーカー: 東宝 発売日: 2005/07/22 メディア: DVD 購入: 1人 クリック: 172回 この商品を含むブログ (123件) を見る 1955年公開の映画です。 成瀬巳喜男の一番有名な作品ということで借りました。 林芙美子の小説『浮雲』が原作らし…

26.景色は文学をつくるかー市川崑『ビルマの竪琴』

ビルマの竪琴 [DVD]出版社/メーカー: 日活発売日: 2002/11/22メディア: DVD クリック: 40回この商品を含むブログ (26件) を見る リモートインターンが佳境。 エラーの連呼、アプリつくるのって難しいんだね。 アプリ開発とかそういう作業をひととおり終えた…

25.際立つ女性陣ー黒澤明『椿三十郎』

椿三十郎 [東宝DVDシネマファンクラブ] 出版社/メーカー: 東宝 発売日: 2013/08/02 メディア: DVD この商品を含むブログ (2件) を見る 黒澤明監督作品『椿三十郎』を観ました。 殺陣シーンの多いエンタメの時代劇です。 少し調べたところによると、戦後はGHQ…

24.長編小説を書くということースコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』村上春樹訳

本作を読んでいる最中から、私は小説について、小説を書くことについて、そしてまた私が小説を書くということについて、絶えず考え続けていた。 ずいぶん哀しくて、ずいぶん嬉しくて、全体としてずいぶん沈んだ気持ちになった。 本作によって抱いた感懐の半…

23.銃と遊戯の融和ー北野武『ソナチネ』

ソナチネ [DVD] 出版社/メーカー: バンダイビジュアル 発売日: 2007/10/26 メディア: DVD 購入: 6人 クリック: 94回 この商品を含むブログ (97件) を見る 最後の更新から半月以上空いてしまった。 このブログの更新が滞るということは、その期間私が本を読ん…

22.北野武『HANA-BI』を観て

9月も半分が過ぎて、最近は夜に窓を開けるとひんやりした冷気が入り込んでくるようになりした。 どうでもいい話ですが、今日近所のドン・キホーテ(セルバンテスの小説ではなく総合ディスカウントストアの方)で座椅子を買いました。 シェアハウスを始めて…

21.読みさしで終わった2つの小説についてー『送り火』と『春、死なん』

近所の某巨大図書館では、新刊の雑誌は貸し出し不可。 なので、新刊の文芸誌はこの図書館に行けば必ず置いてあって読むことができるので(基本的に閲覧している人がいない)、重宝しています。 で数日前に、文藝春秋に掲載の『送り火』を読み始めました。 こ…

20.人はなぜ自己表現をしたがるのか

と突然大仰に題してみたものの、こういうことに関連した哲学や心理学などの学問的素養があるわけでもないし、この場でがっつりまともな文章が書ける自信は全くない。 寂しさを埋めるため、というナイーブな回答で一蹴するのはとりあえず控えておいて、まあ、…

18.『セヴンティーン』大江健三郎ー勃起させるもの

図書館で『大江健三郎自選短篇』を借りて、『セヴンティーン』を読みました。 大江健三郎自選短篇 (岩波文庫) 作者: 大江健三郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/08/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (24件) を見る 大江の本でちゃんと全部読…